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世界紀行 ESSAY,2『~花市場~』


ESSAY,2『~花市場~』


いよいよ、今回の旅の重要な目的の一つ、

フランスの花市場"ランジス"の見学に出かけました。

この日も晴れて、夏のような日射しの中、

ホテルからTAXIで、30~40分くらい郊外に向かいました。


オルリー空港にほど近い、ランジス市場に到着すると、

まずは、入り口を探すところからスタートです。

というのも、市場は大きな倉庫のような場所で、

いきなり迷子になってしまったからです。

こういう時は、動き回らずにじっとしているのが鉄則。

しばらく歩いている人の様子を見ていると、

"あっ、入った!あそこだっ!"と、入り口らしきものを発見。

友人と大きなステンレス・シルバー色の扉の前に立つと、

自動扉が開いて、フランス花市場へと、

最初の一歩を踏み出したのです。


入ってまず感じたことは、"寒い!"ということでした。

目の前に広がるお花の光景よりも、

体感温度の印象が先にたつなんて、

おかしいでしょうか?

この時のフランスは、初夏にしてもかなりの暑さでした。

ですから、冷房がきいていて当然なんです。

でも、東京の大田市場は、

あちらこちらの入り口が開放されているので、

夏の暑い日でも、冷房効果があまりない状態。

そういう固定観念があったので、市場が寒いなんて、

想像もしてませんでした。

暑さに弱いお花を扱っているのですから、

冷房されていて当たり前ですよね。

ちょっと、うかつでした。


でも、寒さにひるんでる場合ではありません!

市場は1Fに生花が、2Fに小物とドライフラワー

が置いてあります。

"セリ"は、どこを見ても、行われていません。

おそらく、対面形式の販売なのでしょう。

この市場に到着したのが、午前9時頃と、

市場にしては遅い時間だったので、

買付けの人は、ほとんどいませんでした。

ただ、こんな所にまで、犬を連れて

買付けに来ている人がけっこういたので、

さすがフランス!と、妙に感心してしまいました。

フランスでは、犬がよくしつけられているので、

子供連れでは入れない場所でも、犬なら立ち入り可能なんです。

日本では、ちょっとこんな光景、考えられませんよね。


さて販売についてですが、お花の種類は、

基本的には日本と同じ様でした。

そして、ここフランスでも、バラは女王様。

他のお花に比べて、だんぜん多品種、大量に販売されていました。

またこの時期(6月)は、"あじさい"の季節でしたので、

それはそれは、たくさんのあじさいが、

色とりどりに笑って出迎えてくれました。

日本よりも、色のバリエーションの多いこと、多いこと!

私は、もちろんバラが好きですが、"あじさい"も大好きなので、

その豊富な色の洪水に、思わず興奮してしまいました。


日本では、オランダ産の"あじさい"が、一番人気です。

趣きのある、大人の色合いがステキだからなのですが、

お値段の方も、大変高価です。

フランスでも、それほど安価ではありませんが、

とにかく色の多さには、正直、驚かされました。


"あじさい"をドライフラワーにする場合、

逆さに吊るしては、うまくできません。

花びらがくしゃくしゃとなってしまうので、そのまま立てた状態で、

乾燥させるので、ドライフラワーとしては、難しいお花です。

私の経験では、オランダ産の"秋色あじさい"が、趣のある色のまま、

美しくドライフラワーになることが多いようです。

ちょっと、横道にそれてしまいましたね。

花市場のお話に戻ることにします。


ランジス市場ですぐに気づいたことは、それぞれのお店が、

かなり個性を前面に出した販売をしていたことです。

もちろん、東京の大田市場の(セリ以外の)お店でも、

得意分野もあるし、個性も出して販売されてますが、

ランジス市場では、もっと強烈な演出を感じました。

例えば、"緑ものだけ"販売しているお店があって、そこでは、

お花は一切ないのです。

すべて"緑色"なんですよ。これには、びっくりです。

また、"南国調のお花だけ"を販売するお店などもあって、

頑固なまでに、個性にこだわっているのを眺めていると、

"個人主義とユニークさ"を追求するお国柄が感じられて、

自然とウキウキしてくるのでした。


次に、2Fに上がり、小物とドライフラワーを見学しました。

予想はしてましたが、ドライフラワーは着色したものばかりで、

私の気持ちに沿うようなものはなく、残念でした。

と、同時に、少し自信と勇気も感じました。

というのも、着色したドライフラワーばかりということは、

私が表現したい世界は、まだ少数派だということ。

だったら、私が先駆者になれるかもしれない!

なんて、思ったりしたのです。

ちょっと、ウヌボレが過ぎるでしょうか?

でも、主流でないからこそ、

もっともっと表現できるスペースがあることを実感し、

自分の選択に間違いはないと、

勇気が出てきたのも本当の気持ちです。


お花を見ながら、デザインのことや、

フランスならではの色合いについてなど、

あれやこれや考えつつ、3時間ほどゆっくり見学し、

やっと市場を出ました。

それから近くにある、リボンや器の卸屋に向かいました。

そこには、素敵なリボンや器がたくさんあって、

形もユニークだし、色使いもフランスならではのセンスにあふれ、

見てるだけで、胸が高鳴りました。

しかも日本に比べて、ずっと安価なんです。

夢中で、買い込んでしまいました!


楽しい市場見学と買い物を終え、いざ帰ろうとして、ハタと気づきました。

「帰りの交通手段がない!」

花市場を見学する旅行者なんて、ほとんどいないですものね。

レストランの方に、TAXI会社に電話をかけていただいたのですが、

待てど暮らせど、なかなかやって来ません。

今回の旅の最大のピンチ!、とジリジリしてましたが、

友人は、"何とかなる"と、気楽に待っています。

そんな友人と一緒だと、私の気持ちまで楽になって、

『そうね、何とかなるわね』、と思えてくるから不思議です。

今回の旅は、おおらかな性格の友人と一緒だったので、

小さなハプニングも、十分楽しめることができました。


旅の楽しみって、出向いた国のことを知るだけでなく、

自分や友人の、新しい面に出会えるという、喜びもありますよね。

やっとTAXIが到着して、無事ホテルにたどりつき、

ドキドキ、ワクワクの花市場見学が終了しました。

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